喪主・関係者の知識
「親が亡くなったあとにはどのような手続きが必要?」
「どの手続きから手をつけたほうがよい?」
故人に関する手続きは実に多く複雑です。「葬儀よりも手続きのほうが大変だった」という方も少なくありません。
時間や労力を消費しないためには、事前に内容を把握し、優先順位をつけて手続きしていくのが重要です。
そこで、本記事では葬儀後に必要な手続きを優先順位別に解説します。自分が遺族になる可能性がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
<この記事で分かること> ・【優先順位ごと】逝去から葬儀までに必要な手続き |
身内が亡くなった際に必要な手続きの種類
身内が亡くなった際、必要な手続きが数多くあります。「どれから手をつけていいかわからない」という方も多いでしょう。逝去から葬儀までに必要な手続きの項目は以下のとおりです。
必要な手続きの項目 | 手続きの期間 |
死亡診断書(死体検案書)を受け取る | 逝去後すぐ |
死亡届の提出・火葬許可証の受け取り | 逝去から7日以内 |
訃報連絡 | 遺体安置後 |
葬儀社と葬儀の打ち合わせ | 遺体安置後 |
葬儀の日程を連絡 | 葬儀の打ち合わせ後 |
葬儀費用の清算 | 葬儀後 |
身内が亡くなった場合、上記の表を上から順番に行っていきます。
それぞれの手続きについて解説します。
死亡診断書(死体検案書)を受け取る
人が亡くなった際には死亡診断書または死体検案書の受け取りが必要です。どちらを受け取るかは、亡くなった時の状況によります。本章では、以下の条件別にどちらの書類を受け取るかについて解説します。
- ・施設や病院で亡くなった場合
- ・自宅で亡くなった場合
- ・不慮の事故で亡くなった場合
ひとつずつ見ていきましょう。
施設や病院で亡くなった場合
病院で亡くなった場合、医師から死亡診断書を受け取ります。ほとんどは当日に発行してもらえます。遅くても翌日には取得可能です。以降のさまざまな手続きで必要になるため、コピーを複数枚とっておくとよいでしょう。
自宅で亡くなった場合
自宅加療中でかかりつけ医がいる場合は、医師に連絡して「死亡診断書」を発行してもらいましょう。
それ以外の事故死や突然死の場合は、警察に連絡します。警察による検死の後に「死体検案書」を交付してもらうのが一般的です。
不慮の事故で亡くなった場合
自宅以外で亡くなった場合は、警察による検死ののち「死体検案書」を受け取ります。事件性があると判断された場合は遺体を司法解剖にかけるため、遺体の安置まで時間が必要です。
死亡届の提出・火葬許可証の受け取り
死亡診断書は死亡届も兼ねています。厳密には、A3用紙の左半分が死亡届、右半分が「死亡診断書」という作りです。
死亡届は逝去から7日以内に市役所へ提出しなければなりません。市役所に提出すると、火葬許可証となって返却されます。火葬時に提出が必要なため、原本は大切に保管しておきましょう。
その他、死亡届提出の概要は以下のとおりです。
提出先 | ・故人が亡くなった地域の役所 ・故人の本籍地の役所 ・提出する人の所在地の役所 |
必要書類 | 死亡届(死亡診断書・死体検案書) |
手続き期限 | 逝去から7日以内 |
なお、死亡届の書き方については以下のページで解説しています。詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
参照:法務省「死亡届」
訃報連絡
遺体の安置と並行して、訃報の連絡もします。連絡先は、遺族・親族・親しくしていた友人などです。並行作業として、入院していた場合は退院の手続きも必要です。
葬儀社と葬儀の打ち合わせ
遺体の安置が完了したら、葬儀社と打ち合わせをします。逝去してから葬儀社を選ぶのは大変なため、事前に探しておくのがおすすめです。
なお、葬儀社のなかには死亡届の提出を代行してくれるところもあります。代行費用は各葬儀社で異なるため、打ち合わせの際に確認してみてもよいでしょう。
打ち合わせでは、葬儀の形式・内容・予算などを話し合います。葬儀形式は、一般葬・家族葬・一日葬・火葬式などさまざまです。それぞれの特徴やメリット・デメリット・必要な費用などを確認して、悔いのない葬儀になるようプランを立てましょう。
それぞれの葬儀形式については以下のページで解説しています。詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
家族葬について知りたい方はコチラ
家族葬とは?呼ぶ範囲、メリットや注意点、流れなどを詳しく解説!
一日葬について知りたい方はコチラ
火葬式について知りたい方はコチラ
火葬式(直葬)のメリット・デメリットを解説【家族葬とどっちがいい?】
葬儀の日程を連絡
葬儀の日程が決まったら、参列していただきたい方々に連絡をしましょう。一般葬の場合は、遺族が電話したり、新聞の訃報欄を使用したりします。家族葬の場合は、参列していただきたい方々に直接連絡します。
葬儀の実施・葬儀費用の清算
家族葬の場合、逝去の翌日、または翌々日に通夜、その翌日に告別式・火葬を行うのが一般的です。葬儀が終了したら、葬儀費用の清算をします。葬儀費用は喪主が支払うのが一般的です。
支払い方法は葬儀社によって異なるものの、近年は現金・銀行振込・クレジットカード決済・葬儀ローンなどさまざまな決済方法を選ぶことが可能で。
また、葬儀の流れを知りたい方は以下のページで詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
葬儀後に必要な手続きの内容と、必要な費用
葬儀後には、相続関係や保険関係など、さまざまな面で手続きが必要です。遺族が手続きしなければならない事項を順番に並べたのが以下の表です。
早急 | 年金受給の停止手続き |
国民健康保険証・健康保険証の返却 | |
介護保険資格喪失届 | |
世帯主変更届 | |
相続以外の諸手続き | |
遺産相続に関する手続き | |
3ヶ月以内 | 相続放棄の手続き |
4ヶ月以内 | 所得税の準確定申告 |
10ヶ月以内 | 相続税の申告・納税 |
1年以内 | 雇用保険受給資格者証の返還 |
2年以内 | 国民年金の死亡一時金請求 |
埋葬料・葬祭費の請求 | |
高額医療費の還付申請 | |
3年以内 | 生命保険金の受け取り |
5年以内 | 遺族年金の請求 |
故人の未支給年金の請求 | |
その他 | 固定資産税の納税 |
それぞれの内容を見ていきましょう。
早急|年金受給の停止手続き
故人が年金を受け取っていた場合は、年金の受給停止手続きが必要です。
手続き先 | 年金保険事務所・年金相談センター |
必要書類 | ・受給権者死亡届(報告書) ・年金証書 ・逝去の事実を確認できる書類 |
提出期限 | ・国民年金:逝去から14日以内 ・厚生年金:逝去から10日以内 |
手続きを忘れてしまうと年金の不正受給となってしまいます。
参考:日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」
参考:日本年金機構「年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか」
早急|国民健康保険証・健康保険証の返却
故人が亡くなったら、健康保険証を返却しなければなりません。
国民健康保険・後期高齢者医療保険制度 | |
手続き先 | 役所 |
手続き期限 | 逝去から14日以内 |
健康保険(社会保険) | |
手続き先 | 年金事務所 |
手続き期限 | 逝去から5日以内 |
故人が会社員の場合は、退職と同時に手続きしてくれる企業がほとんどです。
参考:全国健康保険組合「資格喪失時には保険証を速やかに返却してください」
参考:札幌市「国保をやめる届け出」
早急|介護保険資格喪失届
故人が要支援・要介護認定を受けていた場合は、介護保険資格喪失の手続きが必要です。
手続き先 | 役所 |
必要書類 | 介護保険証、介護保険資格喪失届 |
手続き期限 | 逝去から14日以内 |
参考:札幌市「介護保険の保険証」
早急|世帯主変更届
「世帯主変更届」とは、故人が世帯主であり、同居人が新たに世帯主になる場合に必要な手続きです。
手続き先 | 役所 |
必要書類 | 申請者の本人確認書類 |
手続き期限 | 逝去から14日以内 |
なお、抹消届の手続きは必要ありません。死亡届を提出した際に住民登録が自動で抹消されるためです。
早急|相続以外の諸手続き
以下の手続きは特定の期限はありませんが、基本的には速やかに済ませた方がよいでしょう。
クレジットカードの停止 | 連絡先は各クレジットカード会社(カード裏面に記載)。 |
運転免許証の返納 | 返納先は自動車安全運転センターまたは警察署。 |
パスポートの失効 | 手続き先はパスポートセンター。故人のパスポートや逝去が確認できる書類が必要。 |
団体信用生命保険の請求手続き | 自宅をローンで購入した際に加入する保険。該当する場合は速やかに手続きするのがおすすめ。 |
インフラ関係の名義変更 | 電気・水道・ガスなど、インフラ関係の名義変更。それぞれの契約先に連絡を取らなければならない。 |
携帯電話・スマートフォンの解約 | 相続人であれば解約手続きが可能。必要書類は各通信会社によって異なる。 |
早急|遺産相続に関する手続き
相続に関する手続きも早めに手をつけておきましょう。項目は以下のとおりです。
相続財産調査 | どれほどの財産があるか調べるもの。通帳の捜索・残高証明書の発行、証券会社への問い合わせなど。 |
遺言書の捜索・検認 | 遺産相続に重要な遺言書を捜索し、検認ののち開封する。検認をせずに開封してしまうと、罰金が課せられる、相続手続きがとれない等のリスクが生じる。 |
遺産分割 | 遺言書がなかった場合は遺産分割協議が必要。話し合い後には「遺産分割協議書」を作成。話し合いで解決しなかった場合は「遺産分割調停」を実施。それでも決まらない場合は「遺産分割審判」によって遺産を分割する。 |
相続税の計算・申告・納税 | 配分された遺産に対して相続税を支払う。手続き期限は相続が決まってから10ヶ月以内。 |
不動産の名義変更 | 不動産を相続する場合は名義変更をする。2024年4月から名義変更が義務化され、怠ると10万円以下の罰金が課せられる。 |
銀行の名義変更・預貯金の払い戻し | 遺産に預貯金がある場合は金融機関に連絡して払い戻しまたは名義変更を行う。 |
株式の名義変更 | 株式を相続した場合は名義変更が必要。必要書類は対象の証券会社に確認。 |
自動車の名義変更・処分・売却 | 自動車を相続した場合は名義変更・売却・処分いずれかの手続きが必要。名義変更の場合、普通車は運輸支局、軽自動車は軽自動車検査協会で手続き可能。 |
参考:国税庁「相続税の申告と納税」
3ヶ月以内|相続放棄の手続き
故人に多額の負債があった場合、負債も遺産として引き継がなければなりません。そのような場合、負の遺産を受け取らないための手続きが「相続放棄」や「限定承認」です。
手続き先 | 故人の住所の管轄家庭裁判所 |
必要書類 | 遺産放棄申述書、故人の除籍謄本、故人の住民票除票、申請者の戸籍謄本、など |
手続き期限 | 相続があると認知してから3ヶ月以内 |
なお、葬儀費用を清算するために故人の口座から残高を引き出した場合、相続する意思があると認定されます。
葬儀が終了した後に多額の負債があると判明しても相続放棄できなくなってしまうため、葬儀費用の支払い方法には十分注意しましょう。
参考:裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
4ヶ月以内|所得税の準確定申告
「準確定申告」とは、故人が事業者で確定申告をする必要があった場合、相続人が変わって確定申告をする手続きです。故人が個人事業者だった場合や、年収が2000万円以上の場合に必要です。
手続き先 | 故人の住居の管轄税務署 |
手続き期限 | 逝去から4ヶ月以内 |
参考:国税庁「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
10ヶ月以内|相続税の申告・納税
相続する遺産の総額が相続税の基礎控除額を超える場合、相続税の申告・納税をしなければなりません。
手続き先 | 故人の住所の管轄税務署 |
手続き期限 | 逝去を認知してから10ヶ月以内 |
参考:国税庁「相続税の申告と納税」
1年以内|雇用保険受給資格者証の返還
故人が雇用保険を受給していた場合は受給資格者証の返還が必要です。
手続き先 | 雇用保険を受給していたハローワーク |
手続き期限 | 逝去から1ヶ月以内 |
2年以内|国民年金の死亡一時金請求
故人が国民年金の保険者であり、一定条件を満たしている場合、遺族は死亡一時金を請求できます。
受給条件 | 故人が老齢年金、障害基礎年金のいずれも受給していない |
受給金額 | 12万円〜32万円(年金の加入期間によって異なる) |
ただし、国民年金の死亡一時金を受給した場合、遺族基礎年金は受給できなくなります。
参考:日本年金機構「死亡一時金を受けるとき」
参考:日本年金機構「死亡一時金」
2年以内|埋葬料・葬祭費の請求
国民健康保険や健康保険(社会保険)に加入している方は、手続きによって葬祭費を一部還付してもらえます。詳細は以下のとおりです。
国民健康保険・後期高齢者医療保険制度 | |
手続き先 | 故人が住んでいた市区町村 |
還付金額 | 30,000円〜70,000円 |
必要書類 | 健康保険証、申請者が本人と確認できる書類、申請者の印鑑、葬祭費用の領収書 |
手続き期限 | 逝去から2年以内 |
健康保険(社会保険) | |
手続き先 | 協会けんぽまたは加入先の健康保険組合 |
還付金額 | 50,000円 |
必要書類 | 健康保険埋葬料請求書、健康保険証、死亡診断書の原本またはコピー、葬儀費用の領収書 |
手続き期限 | 逝去から2年以内 |
なお、国民健康保険の場合は金額が各市町村によって異なります。北海道では30,000円で設定している市町村がほとんどです。
参考:札幌市「死亡したとき(葬祭費)」
参考:札幌市「後期高齢者医療葬祭費申請」
参考:全国健康保険協会「ご本人・ご家族が亡くなったとき」
2年以内|高額医療費の還付申請
故人が加療しており、高額な医療費を支払っていた際に利用できる還付金です。
手続き先 | 加入している協会けんぽ、健康保険組合、市区町村 |
必要書類 | 医療費の明細書 |
手続き期限 | 医療費を支払ってから2年以内 |
参考:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
3年以内|生命保険金の受け取り
故人が生命保険の被保険者だった場合、受取人として指定されている方は保険金の受け取り手続きが必要です。
手続き先 | 加入している生命保険会社 |
手続き期限 | 逝去から3年以内 |
参考:日本損害保険協会「保険金請求の時効とは?」
5年以内|遺族年金の請求
遺族に18歳未満の子どもがいる場合に受給できる年金です。「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、加入していた保険によってもらえる種類が異なります。
手続き先 | 年金事務所 |
必要書類 | 年金手帳、戸籍謄本、整体全員の住民票、故人の住民票除票、請求者と子どもの収入を確認できるもの、死亡診断書のコピー、振込先情報、印鑑 |
手続き期限 | 逝去から5年以内 |
参考:日本年金機構「遺族年金」
5年以内|故人の未支給年金の請求
未支給年金とは、受け取るはずだったのに受け取れなかった年金を指します。年金は2ヶ月分をまとめて2ヶ月後に支給するという仕組みなため、逝去のタイミングによっては受け取り損ねた年金が発生するのです。このような年金を受け取るための手続きが「未支給年金の請求」です。
手続き先 | 年金事務所 |
必要書類 | 未支給年金請求書 |
手続き期限 | 逝去から5年以内 |
参考:日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」
その他|固定資産税の納税
故人が固定資産税を所有している場合、逝去した年度の固定資産税は相続人が支払わなければなりません。支払い先は固定資産税がある市区町村です。
生前に決めておくとよい事柄
故人が逝去されてから、遺族はさまざまな手続きに奔走しなければなりません。遺された家族の負担を軽減するためにも、生前にできる事はある程度手をつけておくのがおすすめです。生前に決めておくとよい事柄は以下のとおりです。
- ・葬儀社と葬儀内容
- ・遺産相続について
- ・遺品整理について
それぞれ解説します。
葬儀社と葬儀内容
葬儀社を探し、葬儀内容を決めておくのは重要です。事前に決めていれば、信頼できる葬儀社に執り行ってもらえますし、遺族としても葬儀の準備に時間を取られず、故人とゆっくりお別れができます。
家族葬の場合は、参列者まで決めておき、連絡先も用意しておくとなおよいでしょう。自分が「参列して欲しい」と思う方々とお別れができ、遺族も逝去後に連絡先を調べる手間が省けます。
遺産相続について
遺族同士でトラブルの原因になるのが遺産相続問題です。自分にはどれほどの遺産があって、それぞれ誰にどれだけ相続するか、明記しておくとよいでしょう。
なお、遺産についてはエンディングノートに財産一覧を書いておくと便利です。
ウィズハウスでは、葬儀に関する資料とエンディングノートを無料で用意しています。気になる方は以下のページからお取り寄せください。
遺品整理について
遺品整理は莫大な時間と労力が必要です。家族に負担をかけないよう、残しておいて欲しいもの、捨ててもよいものを明記しておくとよいでしょう。生前整理である程度処分してしまう方法もあります。
まとめ:逝去後の手続きは優先順位を把握して実行していくのがおすすめ
逝去後の手続きは多岐に渡ります。手続き期限が定められているものもあり「葬儀よりも手続きの方が大変だった」という遺族も少なくありません。
手続きを避けることはできませんが、優先順位をつけて負担を軽くすることは可能です。本記事では、手続きの項目を優先順位ごとに解説しています。
自分が遺族の立場になった際スムーズに手続きが完了できるよう、ぜひ参考にしてみてください。