マナーやご作法
生前親しくしていた方の葬儀がもし神式だった場合、戸惑う方も多いのではないでしょうか?
日本では仏式の葬儀が一般的ですが、神道やキリスト教など異なる宗教の葬儀も執り行われています。
今回は神道の葬儀である「神式葬儀」について、全体の流れやマナーなどを詳しく解説していきます。
葬儀の流れは仏教と神道で大差はありませんが、神式葬儀において行われる儀式には、仏式とは異なる独特の作法があります。
初めて神式葬儀に参列する際に、「これだけは覚えたおいた方が良い」という作法やマナーもお伝えします。
この記事でわかることは以下の4つです。
- ・神式葬儀と仏式葬儀の違いについて
- ・神式葬儀の流れについて
- ・玉串奉奠や神棚封じなど神道の作法について
- ・家族葬で神式葬儀を行うことはできるのか?
神式葬儀の目的は仏式と違う?
神道形式で行われる葬儀のことを「神葬祭(しんそうさい)」や「神式葬儀」と呼びます。
神道では祖先を神として崇拝しており、亡くなった方は神の仲間入りをして家の守護神になるとされています。
また神道において「死は穢れ(けがれ)」であることから、葬儀を行うことで日常を取り戻すという目的もあります。
対して仏式の葬儀は故人の成仏を祈り、極楽浄土へ送ることが主な目的。
「通夜→葬儀・告別式→火葬」という大まかな流れは仏式も神道もほぼ変わりませんが、目的は異なるということです。
仏式と神道の違いについては以下のようなものも挙げられます。
神式葬儀に参列する際の香典・服装はどうする?
神式葬儀でも仏式と同様に香典(玉串料)は必要です。
金額相場も仏式とほぼ同様ですが、不祝儀袋については白地のシンプルなものを使用しましょう。
蓮の花のイラストなどが描かれた不祝儀袋を使用することはマナー違反とされています。
水引は白黒の結び切りで、表書きは「御玉串料(おんたまぐしりょう)」や「御榊料」、「御霊前」が一般的。
(喪主は黒白の結び切りが基本ですが、参列者は黒白のほかに双銀の結び切りでも大丈夫です)
「御香典」の表書きは仏式葬儀にしか使えませんので注意してくださいね。
「御霊前」は宗派を問いませんので、よくわからない場合はこちらを記入しておけば間違いないでしょう。
玉串料の相場については以下の表を参考になさってください。
服装については仏式と同様に喪服を着用しますが、数珠は不要です。
葬儀の時の服装についてはコチラの記事でも詳しくお伝えしています。
神式葬儀の流れについて
続いて神式葬儀の流れについて見ていきましょう。
まずは全体の流れ・儀式を一覧でまとめましたのでご覧ください。
1日目
故人が亡くなった当日(仏式でいう臨終~納棺)に行われる儀式は、主に3つあります。
①帰幽奉告(きゆうほうこく)
神道では訃報を受けた後、祖霊舎(それいしゃ・仏式でいう仏壇)へ故人の死の奉告(ほうこく)を行います。
このとき同時に行われるのが「神棚封じ」という儀式。
祖霊舎に死の穢れが入らないよう、扉を閉めて白い紙を貼る儀式です。
神棚封じは五十日祭の忌明けまで続きます。この間、普段のお供えや礼拝もお休みし、故人への祀り(まつり)を優先します。
②枕直しの儀
故人の遺体をお清めしたら白い小袖を着せます。顔は白い布で覆い、北枕に安置します。
枕元には守り刀を供える場合もあるでしょう。祭壇には米・水・塩のほか故人の好物が供えられます。
③納棺の儀
神衣(かんみそ・仏式でいう死装束)に着替えさせて棺に遺体を納めます。
棺を白い布で覆い祭壇に安置します。
2日目(神葬祭初日)
2日目は仏式での通夜・葬儀にあたる「通夜祭」と「遷霊祭」という儀式が行われます。
④通夜祭
雅楽奏者の演奏のもと、神職による祭祀・祭文(さいし・さいもん)が奏上されます。
参列者は玉串奉奠(たまぐしほうてん)という儀式を行います。
玉串奉奠は仏式の焼香にあたるもので、参列者が1人ずつ榊の枝を祭壇前に供える儀式のこと。
玉串奉奠については後ほど詳しくご説明します。
⑤遷霊祭(せんれいさい)
故人の魂を霊璽(れいじ・仏式でいう位牌にあたるもの)へうつす儀式。
「御霊(みたま)うつし」とも呼ばれています。
このとき魂が動くとされる夜を再現するため、部屋の灯りは消されます。
霊璽へ魂をうつすと故人は家の守護神になるとされています。
3日目(神葬祭2日目)
最終日は、仏式での告別式・火葬にあたる儀式が4つ行われます。
⑥葬場祭(そうじょうさい)
参列する方は「手水(ちょうず)の儀」や「修祓(しゅうばつ)の儀」でお清めを行います。
「手水の儀」は柄杓で水をすくい、手や口を清める儀式のこと。
弔辞・弔電の奉読、故人の生前の業績や人柄を述べる祭祀奏上、玉串奉奠も行われます。
お供え物を備え奏楽を奏でる献饌(けんせん)・奉幣(ほうへい)の儀もあります。
⑦火葬祭
故人の遺体を火葬場へうつしてから行われる儀式。
神職による祭祀奏上、参列者は玉串奉奠を行います。
⑧埋葬祭
遺骨を墓に納める際に行われる儀式です。
葬儀当日に行われる場合と、葬儀後の五十日祭(仏式の四十九日にあたる儀式)に合わせて行う場合があります。
埋葬祭では故人の名前や職業が記された「銘旗(めいき)」や花が供えられます。
⑨帰家祭(きかさい)
葬儀後、自宅へ戻ったら塩や手水でお清めします。
その後、葬儀が無事に終わったことを祖霊舎へ報告する儀式が帰化祭です。
札幌近郊では火葬場から斎場に戻って行われるのが一般的ですね。
かつてその後は直会(なおらい)という会食を行っておりましたが現在は参加者へ引き物、忌中料理を持ち帰りとして遺族よりお渡しします。
北海道の一般的な葬儀の流れについてはコチラの記事で詳しくお伝えしています。
神式葬儀で行う「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」とは
独特の儀式や作法の多い神式葬儀。
特に玉串奉奠は神道の葬儀において頻繁に行われる儀式ですので、参列する際は覚えておいた方が良いでしょう。
玉串とは榊の枝のことを指します。神道において榊は神聖な植物という位置づけ。
参列者が1人ずつ榊の枝を受け取り、お供えしていくのが玉串奉奠の儀式となります。
玉串奉奠は以下の手順で行いましょう。
- ⑴神職へ一礼して玉串を両手で受け取ります。このとき、榊の根元を右手で上から持ち、左手は葉先の下に添える形にしましょう。
- ⑵玉串を胸の高さで持ったまま祭壇前まで移動し、一礼。
- ⑶祭壇に玉串を供える際、最終的に根元が祭壇側に向くよう供えるのですが、一気にぐるりとは回しません。まず葉が祭壇側にくるよう時計回りに90度回転させます。その後、右手と左手を持ち替えたら更に時計回りに180度回転させて根元を祭壇側に向けましょう。
- ⑷玉串を祭壇に供えたら二礼・二拍手・一礼を行います。このときの拍手は音を立てない「忍び手」で行ってください。
- ⑸祭壇へ一礼してから自席へ戻ります。
家族葬で神式葬儀を行うことはできる?
家族葬でも神式葬儀を行うことはできます。
基本的な内容や流れは家族葬・一般葬と違いはほとんどありません。
神式葬儀は仏式葬儀と比べて葬儀時間が長い傾向がありますが、家族葬で行う場合は参列者数が少ない分、葬儀時間が短くなるかもしれませんね。
家族葬を検討している方はウィズハウスへぜひご相談ください。
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まとめ
- ・神道の葬儀は「神葬祭」や「神式葬儀」と呼ばれ、故人の魂を祖先の神々と共に奉ることと、「死の穢れ」から日常を取り戻すことを目的に行われる
- ・神式の葬儀では納棺までに「帰幽奉告」などの儀式を行い、2日目以降は「通夜祭」や「葬場祭」・「火葬祭」などが行われる
- ・神道では榊の枝を祭壇前へ供える「玉串奉奠」や、死の穢れから神を守るために祖霊舎の扉に白い紙を貼る「神棚封じ」など独自の儀式・作法が多い