葬儀の知識
仏式の葬儀では「戒名」を授かり、位牌に記すのが一般的です。
戒名は中国から仏教と共に伝来しましたが、日本独自の進化を遂げていったもの。
戒名は故人の人柄や功績を反映しているだけでなく、実は「ランク」もあります。
今回は戒名の意味やランクについて解説したあと、戒名料の費用相場についても宗派別にご紹介します。
また「戒名は自分でつけてもいいの?」「そもそも戒名はいらないのでつけなくてもいい?」といった疑問についてもお答えします。
この記事でわかることは以下の4つです。
- ・そもそも戒名とは何か
- ・戒名のランクと費用相場について
- ・戒名をつけなくても問題はないのか?
- ・戒名にまつわるトラブルについて
戒名とは何か
戒名とは仏様の世界における故人の新しい名前です。
仏教において故人は亡くなると仏弟子になるとされており、その世界での呼び名が戒名ということです。
故人が出家していなくても、戒名を授かることで迷わず極楽浄土へたどり着けるといわれています。
戒名は4つの構成で成り立っている
「戒名」と聞くと長い漢字の連なりを連想する方が多いと思いますが、実際の戒名はその中の2文字だけ。
戒名は主に「院号」+「道号」+「戒名」+「位号」の4つで成り立っています。
戒名例:【○○院△△□□居士】
(〇=院号、△=道号、□=戒名、居士=位号)
「院号」は皇族・貴族といった高い位の方に用いられたもので、「道号」は故人の人柄や特徴を表しています。
「戒名」は現世の名前から1文字、経典などから1文字を取って使われることが多く、浄土での故人の呼び名となります。
最後の「位号」は現代の敬称にあたるもの。社会的地位や信仰心の度合いによって変わる尊称で、性別や年齢によっても異なります。
宗派によって戒名の特徴がある
戒名は宗派によっても少しずつ異なります。
位牌を作成する際は、戒名の1文字目の上に「梵字(ぼんじ)」や「冠字(かんむりじ)」が添えられる宗派もあります。
浄土宗【院号+誉号+戒名+位号】
また道号の代わりに「誉号(よごう)」が入れられるのも浄土宗の特徴。
戒名は男女別で使用する文字が異なることが多いですが、誉号に関しては男女問わず「誉」の文字が使われます。
戒名例:【※○○院△誉□□大姉】
(※=阿弥陀仏を表すキリーク、○=院号、△誉=誉号、□=戒名、大姉=位号)
浄土宗で位牌を作成する際、院号の上に「キリーク」と呼ばれる阿弥陀仏を表す梵字を記すことがあります。
真言宗【院号+道号+戒名+位号】
未成年の場合は地蔵菩薩を示す「カ号」を使用します。
戒名例:【※○○院△△□□信士】
(※=「ア号」や「カ号」の梵字、○=院号、△=道号、□=戒名、信士=位号)
真言宗の位牌を作成する際、院号の上に、大日如来の弟子であることを表す「ア号」の梵字が入る場合があります。
日蓮宗【院号+道号+法号(日号)+位号】
戒名の代わりに「法号(ほうごう)」もしくは「日号」を入れますが、これは真言宗において信徒に授けられる名前のことです。
男性の戒名には「日」、女性の戒名には「妙」が入ります。
戒名例①:【妙法○○院△△日□居士】(男性)
戒名例②:【妙法○○院△△妙□大姉】(女性)
(妙法、○=院号、△=道号、△日(妙)=法号(日号)、居士・大姉=位号)
日蓮宗の位牌を作成する際は、院号の上に「妙法」を入れる場合があります。
浄土真宗【院号+釋号+法号】
浄土真宗では「戒名」ではなく「法名」と呼んでいます。
また「阿弥陀仏の前では全員平等である」という教えから位号がなく、「院号+釋号(しゃくごう)+法号」という3つの構成で成り立っています。
お釈迦様の弟子になるという意味のある「釋号」がつけられますが、男性は「釋」、女性は「釋尼(しゃくに)」と表します。
戒名例①【○○院釋△△】(男性)
戒名例②【○○院釋尼△△】(女性)
(○=院号、釋・釋尼=釋号、△=法号)
戒名にはランクがある
戒名のランクは最後につけられる位号を見るとわかりやすいです。
位号は主に「居士・大姉(こじ・だいし)」、「信士・信女(しんし・しんにょ)」、「禅定門・禅定尼(ぜんじょうもん・ぜんじょうに)」の3種類。
ランクの高い戒名には位号の上に「院」の文字がつき「院居士・院大姉」のように表されます。(職業や生前の功績により、院号に準ずる寺号、軒号、斎号、庵号などもあります)
「ランクが高い方が故人の供養になるのでは?」と思う方も多いようですが、そんなことはありません。
戒名のランクはあくまでも社会的貢献度を表す敬称としてのランク。日々のお参りや故人を敬う気持ちを持つことが何よりの供養となります。
「居士・大姉」と「院居士・院大姉」
人々から尊敬の念を抱かれるほど、厚い信仰心を持った信者に授けられる位号。
「院居士・院大姉」が1ランク上の位号となります。
「信士・信女」と「院信士・院信女」
仏の教えを信じ清らかな生活を送った人に授けられる位号です。
1ランク上の位号は「院」の文字をつけて「院信士・院信女」と表します。
「禅定門・禅定尼(ぜんじょうもん・ぜんじょうに)」
戒律を守って修行に励む信者へ授けられる位号となります。
仏門に入り剃髪した男女の呼び名が由来といわれています。
未成年の位号は「孩子・孩女」や「大童子・大童女」など
これまでご紹介してきたものは基本的に成人男女の戒名。未成年特有の位号もあります。
5歳以下の幼児で男の子なら、孩子(がいじ)、嬰児(えいじ)、女の子は孩女(がいにょ)、嬰女(えいにょ)など。
17歳までの子供の場合、男子は大童子(だいどうし)・禅童子(ぜんどうし)、女子は大童女(だいどうにょ)・禅童女(ぜんどうにょ)といった位号があります。
戒名料の費用相場を宗派別でご紹介
戒名料の費用相場について一覧表にまとめましたので参考になさってください。
こちらはあくまでも全国平均ですので、地域によって費用相場は異なります。
ちなみに北海道の札幌市周辺地域での相場は3万円~で、位が高い「院居士・院大姉」でも20万~30万円程度が一般的。
戒名料の相場がわからないときは、寺院へ直接聞いてみても失礼にはあたりません。
戒名料はいつ僧侶に渡せばいい?
戒名は、故人の逝去後お寺へ連絡したときや、枕経をあげていただく際に僧侶へ依頼します。
故人の人柄や趣味、従事した仕事などを伝えると戒名に反映してもらいやすくなります。
戒名料は一般的に、火葬が終わり、還骨法要が終了した後に僧侶へ挨拶する際に、お布施、御車代、御膳料と一緒にお渡しします。
北海道旭川市のお布施の費用相場については以下もご参照ください。
戒名はいらない?戒名をつけないメリット・デメリットとは
家族葬や一日葬など葬儀の多様化が進んでいる昨今。「戒名はいらない」と考える方もいらっしゃるようです。
基本的に戒名は、僧侶に依頼して授かります。「戒名をつけない=僧侶への戒名料が不要」ということになりますので、費用負担が軽くなる点はメリットでしょう。
デメリットは代々続く菩提寺がある場合、戒名を依頼しなかったことで葬儀や納骨、葬儀後の法要等を拒否される恐れがあることです。
戒名を付けない意向であれば菩提寺へ早めの連絡が必要です。
先祖代々のお墓に納骨することにこだわりがなければ、宗旨・宗派を問わず埋葬できる民営墓地などに埋葬することはできます。
もし菩提寺がない場合は、ウィズハウスで僧侶の手配も可能ですのでご相談くださいね。
ちなみにキリスト教葬儀や神道の葬儀(神葬祭)を行う場合、そもそも戒名は必要ありません。
現代は無宗教葬を行う喪家も多くいらっしゃいます。仏式葬儀でなければ戒名は不要ですので、ご遺族で相談してみるのも良いでしょう。
戒名を付けずに俗名を使うケースや、ネットで戒名を作成できるサービスを利用するなど選択肢はさまざまです。
故人やご遺族にとって最適な方法を考えてみてくださいね。
また、戒名をつけるのは大前提とした場合でもトラブルはあります。
たとえば戒名料を納めたのに高い位の戒名を授けてもらえなかったケース。
どのランクの戒名をつけたいのかハッキリしている場合は、素直にお寺へ尋ねてみても良いでしょう。
こういったトラブルを未然に防ぐため、自身の戒名を生前に授かることのできる「生前戒名」を選択する方もいらっしゃいます。
生前に戒名を授かることは仏教ではかなり徳の高いこととされているのだそう。
本来、戒名は生前につけてもらうことが一般的でした。
ご遺族に負担をかけたくないという方は生前戒名も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか?
葬儀の種類や費用相場については以下の記事でも詳しくお伝えしています。
「葬儀の種類が多様化している!最近の傾向や種類別の費用相場を紹介」
まとめ
- ・戒名とは仏様の弟子になった証の呼び名
- ・戒名は基本的に4つの構成から成るが宗派によって異なる
- ・戒名料の費用相場はランクや宗派、地域によって異なる
- ・戒名をつけないことで菩提寺から葬儀や納骨を断られる可能性がある
- ・仏式の葬儀を行わない・納骨場所を民営墓地にするなどの対応もある