葬儀の知識
日本の伝統的な供養方法のひとつに納骨式があります。納骨式は、故人の遺骨を永眠の地へと納める大切な儀式です。この際、僧侶に対してお布施を渡すのが一般的ですが、その相場やマナーについて詳しく知る人は少ないかもしれません。特に、北海道においては地域ごとの風習や相場の違いが存在します。
この記事では、納骨式の基本的な流れや費用、お布施の相場とマナーについて詳しく解説します。正しい知識を持って納骨式に臨むための参考にしていただければ幸いです。
納骨を行う納骨式とは?
納骨式とは、故人の遺骨を墓石や納骨堂に納めるための儀式です。多くの場合、僧侶が読経を行い、遺族や親しい人々が参列します。納骨式は、故人の魂が安らかに眠るための大切なものとされています。
納骨式の時期や方法は宗派や地域によって異なることがありますが、基本的には厳粛な雰囲気の中で行われます。北海道においても、大まかな流れや意義は変わりません。
納骨式は四十九日法要のときに行うのが一般的
納骨式は、一般的に四十九日法要と同時に行われることがほとんどです。四十九日法要は、故人が亡くなってから49日目に行われる法要で、故人の魂が極楽浄土へと導かれるための重要な節目とされています。この時期に納骨式を行うことで、故人の遺骨が安置される場所が決まり、遺族も心の区切りをつけることができるとされているのです。
四十九日法要と納骨式を同時に行うことにはいくつかの利点があります。まず、遺族や参列者が一度に集まりやすいという点です。多くの人が忙しい日常生活を送っているためです。別々の日程で法要と納骨式を行うよりも、一度に済ませる方が都合が良い場合が多いでしょう。また、儀式が一度で済むため、精神的な負担も軽減されます。
一方で、四十九日法要とは別の日に納骨式を行うことも可能です。例えば、故人が遠方で亡くなった場合や、家族の事情で日程を調整しなければならない場合などです。この場合、適切な時期を選んで納骨式を行う必要があります。特に、北海道のような寒冷地では冬季の納骨が困難な場合もあり、気候や交通の状況を考慮しなければなりません。
どちらの場合でも、納骨式を行う際には事前にしっかりと準備をし、僧侶や関係者と十分に打ち合わせを行うことが大切です。納骨式は故人への最後の別れの場でもあり、遺族にとっては心の整理をつける大切な儀式です。そのため、心を込めて丁寧に進めることが求められます。
納骨式のお布施の相場はどのくらい?
納骨式のお布施の相場は、地域や寺院によって異なりますが、一般的には3万~5万円程度が目安とされています。実は納骨式のお布施は、サービス料金ではないため、決まった額が存在していません。極論、渡さなくても良いのですが、読経をしてくれた僧侶に対して失礼にあたります。相場の金額は用意しておき、お渡しできるようにしておきましょう。
具体的な金額は、納骨式を行う寺院の規模や僧侶の人数、法要の内容によっても変わるため、事前に確認しておくことが重要です。以下に、納骨式のお布施の金額の目安となるポイントを紹介します。
お布施の金額の目安となるポイント
お布施の金額を決める際には、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。
・地域の慣習
・寺院の規模と宗派
・法要の内容と僧侶の人数
これら以外にも、いくつかの要素でお布施の金額が決定されます。詳しく見ていきましょう。
いつも渡すお布施の金額が決まっている場合
地域や家族の習慣によっては、常に決まった金額のお布施を渡すことがあります。この場合、その金額に従ってお布施を用意すると良いでしょう。例えば、親しい寺院があり、日頃からの付き合いがある場合には、その寺院での相場に合わせることが一般的です。
地域によるお布施の目安
地域ごとにお布施の相場は異なります。例えば、関東では5万円前後とされているお布施も、北海道では3万3千円程度が相場です。あくまで四十九日法要の場合ですが、おおむねこの程度だと思っておきましょう。
ただし、居住地と宗派の組み合わせによっては、お布施が高くなる場合もあります。宗派が地域内では少数派の場合、檀家数も少なくなるため、お布施の金額が高くなるのです。また、宗派そのものによってお布施の相場が異なる場合もあります。
不安が残る、失礼がないように準備したいなどの場合は、事前に菩提寺や親戚縁者に相談しておきましょう。
お寺によるお布施の目安
お布施の金額は、納骨式を行う寺院によっても異なります。大規模な寺院や名刹、総本山と呼ばれる寺院では、一般的な相場よりも高額になる場合があります。一方、小規模な寺院や地方の寺院では、比較的低めの相場になることが多いです。寺院の格式は、以下の順で下がっていきます。
・総本山
・大本山
・本山
・末寺
お布施の金額の違いは寺院の格式によるもので、属する寺院の寺格が高いほど、お布施は高額になります。納骨式を行う寺院に直接問い合わせて、具体的な金額を確認すると確実です。
お布施以外にお寺へ納める費用
納骨式ではお布施以外にも、寺院に納める費用が発生することがあります。例えば、戒名料やお車代、お膳料などです。何にどの程度のお金がかかるのかは、寺院の寺格や宗派、地域によって異なります。
これらの費用も事前に確認し、適切な金額を用意しておくことが重要です。追加の費用については、納骨式を行う寺院に相談し、必要な準備をしましょう。あるいは、親戚などに確認したうえで、当日に不足がないように準備することを強くおすすめします。
納骨式でお寺に納める以外に必要となる費用
納骨式では、寺院に納めるお布施や費用以外にも、いくつかの費用が発生します。具体的には、以下のとおりです。
・お供え物の準備にかかる費用
・納骨式の後に会食をする場合の費用
・墓石へ納骨する場合に必要となる費用
・納骨堂へ納骨する場合に必要となる費用
具体的な費用項目について説明します。
お供え物の準備にかかる費用
納骨式では、故人への供養のためにお供え物を準備します。一般的には果物や菓子、花などが用意されます。お供え物の費用は、選ぶ品物や量によって異なりますが、5千~1万円程度が相場です。特に、季節の花や故人の好きだったものを選ぶことで、より心のこもった供養となります。宗派でルールが定められている場合もあるため、事前に確認しましょう。
なお、最近では現金をお供えするケースも増えています。こちらも宗派などによって異なりますが、おおむね5千~2万円程度です。
納骨式の後に会食をする場合の費用
納骨式の後、親族や参列者と共に会食を行うことが一般的です。僧侶へのお礼や参列者へのお礼の意味があります。「おとぎ」と呼ばれるこの会食では、料理や飲み物の費用がかかります。会食の費用は、場所や料理の内容によりますが、一人あたり3千~5千円程度が目安です。参列者の人数に応じて、総費用を計算しておきましょう。
墓石へ納骨する場合に必要となる費用
故人の遺骨を墓石に納める場合、墓石の開閉作業や、納骨の手数料が発生します。これらの費用は、墓地や霊園の管理者によって異なりますが、1万~3万円程度です。事前に管理者に確認し、必要な費用を準備しておくことが重要です。
あわせて、墓誌に故人の戒名などを彫り込む作業などで費用がかかるほか、卒塔婆代も必要になります。
納骨堂へ納骨する場合に必要となる費用
納骨堂に遺骨を納める場合、納骨堂の使用料や管理費がかかります。納骨堂の立地や施設の規模によって異なるため、詳細は寺院や管理会社に問い合わせてください。
すでにある墓に納骨しない場合と比較すると、墓誌の彫刻代や卒塔婆代が不要になるメリットがあります。一方で、永代使用料や永代供養代など、お墓ではかからない費用がかかる点に注意が必要です。
納骨堂の利用を検討する際には、費用の詳細を確認し、納得のいく施設を選ぶことが大切です。
葬儀をしてから納骨式までにすべきこと
葬儀が終わった後、納骨式までにすべきことはいくつかあります。まず、「後飾り」と呼ばれる簡易祭壇への安置と、線香やお供え物などの準備です。
続いて行うのが、納骨先の決定と手続きです。墓地や納骨堂の契約を済ませ、納骨の日時を調整します。また、納骨式に必要な準備を進めることも重要です。僧侶や関係者との打ち合わせ、お供え物やお布施の準備などを行い、当日に備えましょう。
なお、新しくお墓を購入する場合、納骨まで3~6か月程度の日数がかかります。時間に余裕をもって準備を進めましょう。
納骨式のための準備について
納骨式を円滑に行うためには、事前の準備が欠かせません。具体的には、以下の点に注意しましょう。
・開眼供養
・お墓の新設や戒名を彫る職人の手配
・埋葬許可証の準備
・納骨式の日取りの準備
・招待者の決定
・僧侶や宗教者への依頼
・会食や引き出物の準備
開眼供養とは、お墓や仏壇などを新規で購入した場合に行う宗教儀式です。これらを済ませたうえで、納骨式に臨みます。
本記事では、特に迷いがちな参列者の決定と納骨式当日の流れ、服装やお布施の準備等を解説します。
納骨式の参列者
納骨式には、故人の親族や親しい友人が参列します。招待する人数や範囲を事前に決め、参列者に連絡を取りましょう。特に遠方からの参列者には、交通手段や宿泊先の手配も考慮してください。
もし家族だけで行う場合は、その旨をしたためた手紙を郵送したり、連絡を入れるようにしましょう。
納骨式の流れ
納骨式は、僧侶の読経から始まり、遺族や参列者が順に焼香を行います。その後、遺骨を墓石や納骨堂に納め、再度読経を行って終了します。式の流れを事前に確認し、スムーズに進行できるよう準備しましょう。
納骨式の服装
納骨式では、一般的に黒の喪服を着用します。男性は黒のスーツ、女性は黒のワンピースやスーツが適しています。子どもや高齢者も、できるだけ黒の服装を心がけましょう。アクセサリーや靴も黒で統一し、厳粛な場にふさわしい装いを意識してください。
ただし、どのような服装にするかは、家族間で取り決めておいても問題ありません。宗教・宗派に決まりがあるのであれば、それに従うことをおすすめします。
お布施の準備とお渡しするときのマナー
お布施は、納骨式の前に準備しておきます。お布施を渡す際には、僧侶に対して感謝の気持ちを込めて丁寧に手渡します。以下の章で、お布施の具体的な準備と渡し方のマナーについて見ていきましょう。
お布施の表書き
お布施の表書きは、一般的には「御布施」または「お布施」「御読経代」と記載します。その下には、苗字や姓名を書くのが一般的です。ただし、「御読経代」と書けない場合もあります。事前に確認しておいてください。
地域や宗派によって異なる場合があるため、事前に確認しておくことが重要です。表書きには、毛筆や筆ペンを使用し、丁寧に書きましょう。
お布施の水引
お布施の封筒には、水引がついているものが一般的です。水引とは、慶弔の際の贈答品に付けられる紐のような飾りです。納骨式や四十九日法要も弔事にあたるため、使うと思っている人もいるでしょう。
しかし、納骨式のお布施の場合、封筒に水引はいりません。四十九日法要で渡す場合、奉書紙や白無地の封筒にお金を入れるためです。
お布施の封筒
お布施に使用する封筒は、水引の章で触れたとおり、奉書紙や白無地の封筒を採用するのが一般的です。あるいは市販されているお布施袋でも構いません。
もっとも丁寧なものは奉書紙ですが、用意できない場合は白無地の封筒を使いましょう。郵便番号などが書いていない、無地のものを選んでください。ポイントは封筒を二重にしないことです。
お布施のお金の向き
お布施を封筒に入れる際には、お札の向きに注意します。一般的には、お札の表側(肖像がある方)を上にして封筒に入れます。封筒の裏側から見て、お札の表が見えるようにするためです。お札の向きを整えることで、丁寧さを示すことができます。
複数枚の紙幣を入れる際は、入れる向きをそろえておくのも忘れてはいけません。
お布施の包み方
お布施の封筒は、最初に白い半紙でお金を包み、そのあと奉書紙で包むのが一般的です。奉書紙は、左・右・下・上の順で包んでください。丁寧に折りたたみ、封筒がしっかりと収まるようにしましょう。
最終的に、奉書紙の上部分が下部分に位置するように包んでください。こうすることで、故人や僧侶への敬意を示せます。
お布施の渡し方
お布施を渡す際には、両手で丁寧に渡します。基本的には、袱紗を使用してお渡します。袱紗を使用しない場合は、切手盆などのお盆に載せて渡してください。直接床に置いてはいけない点は、どちらも共通しています。
渡すタイミングは、納骨式は四十九日法要の前後です。ゆっくり渡したいという人は、法要終了後に渡しても良いでしょう。
お墓へ納骨しない永代供養とはどんなもの?
永代供養とは、故人の遺骨を一定の期間、寺院や霊園で供養してもらうことです。お墓を建てずに、寺院が管理する納骨堂や供養塔に遺骨を納められる点がメリットです。また、遺族が定期的に墓参りや管理を行う必要がないのも、メリットのひとつと言えるでしょう。また、遠方に家族が住んでいて墓の管理ができない場合や、後継者がいない場合にも適しています。
ただし、永代供養と謳っていても、実際には期限が定められている場合もあります。また、多くの場合は共同墓地での遺骨管理となるため、その点にも注意が必要です。なお、一度共同墓地に遺骨を納めてしまうと、取り出せない点にも注意です。
永代供養を選択する場合は、必ず親族と相談してからにしましょう。取り返しのつかないトラブルに発展する恐れもあるため、自分一人で決めないようにしてください。
納骨式の相場を知ってマナーある対応をしましょう
納骨式は、故人への最後の別れを告げる大切な儀式です。適切なお布施や費用を準備し、マナーを守って納骨式を行うことが求められます。本記事で紹介したポイントを参考に、納骨式の準備を進め、心のこもった供養を行いましょう。
細かなルールは、宗教・宗派によって異なります。詳細を知るには、関わりのある檀家や宗教者、親族に聞き取りを行いましょう。納骨式の相場やマナーをしっかりと理解し、故人の安らかな眠りを、祈る気持ちを大切にしてください。