葬儀の知識
「生前に葬儀費用を準備して、子どもたちには迷惑をかけないようにしたい」
「葬儀費用を用意する手段として葬儀保険が気になっているけど、本当に良い選択か分からず悩んでいる」
葬儀保険は、葬儀に関する費用を用意するための保険商品です。「月々の負担が軽い・誰でも気軽に加入できる」という漠然としたイメージを持っている方も多いでしょう。
葬儀保険は、仕組みを理解していなければ「保険金よりも保険料が上回ってしまった」「保険金が足りなかった」といった事態も起こりえます。
そこで、本記事では葬儀保険の内容・メリット・デメリット・選ぶ際の注意点などを解説します。
本記事を読めば、
葬儀保険が自分に必要なものなのかが理解できます。
葬儀保険で損をしたくない方は、ぜひ参考にしてみてください。
葬儀保険とは
葬儀保険とは、葬儀費用や葬儀後の整理費用に備えるための保険です。「終活保険」とも呼ばれています。保険の種類は「少額短期保険」で、1年ごとに更新される商品がほとんどです。
少子高齢化や核家族化により「自分の葬儀費用くらいは用意したい」「子どもに迷惑をかけたくない」といったニーズが増加し、近年注目を集めています。
「生命保険(終身保険)」との違い
「保障の対象者が亡くなった際に保険金が受け取れる」という意味では生命保険(死亡保険)と同じですが、実態は別物の商品です。ふたつの違いを表にまとめました。
生命保険(終身保険)と葬儀保険の違い | ||
生命保険(終身保険) | 葬儀保険 | |
保障 | 一生涯 | 1年更新がほとんど |
保険料 | 高い | 安い |
加入条件 | 厳しい | 優しい |
加入年齢の上限 | 80歳までが多い | 80~89歳あたりまで可能 |
貯蓄性 | あり | なし |
生命保険料控除 | 利用できる | 利用できない |
葬儀保険は、基本的には掛け捨てです。
「互助会」との違い
互助会とは、葬儀保険とは別の方法で葬儀費用を用意するための仕組みです。毎月一定額を支払うことで、一般価格よりも低い「会員価格」で葬儀が執り行えます。会員ならではのサービスを用意しているところも少なくありません。
葬儀保険と大きく異なるのは、途中で解約した場合、契約に基づいた積立金が返金される点です。葬儀保険は掛け捨てですが、互助会は一定額の返金が受けられます。
また、多くの互助会では「積立金」と明記していますが、実態は「前払金」です。前払金を支払うことで、冠婚葬祭に関するサービスが保証される仕組みです。
葬儀保険のメリット3つ
葬儀保険の主なメリットは以下の通りです。
- ・メリット①80歳以上でも加入しやすい商品が多い
- ・メリット②月の保険料がそれほど高くない
- ・メリット③使用用途が自由
それぞれ見ていきましょう。
メリット①80歳以上でも加入しやすい商品が多い
葬儀保険の多くは、高齢でも加入しやすくなっています。なかには「89歳まで申し込み可能」「99歳まで更新可能」のような商品もあります。
健康状態に関しては医師の診断が不要な告知タイプが多く、持病があっても比較的加入しやすい保険です。
ただし、持病の内容によっては加入できない場合もあるため注意しましょう。
メリット②月の保険料がそれほど高くない
葬儀保険は掛け捨て保険ですので、保険料が500円〜10,000円と、一般的な保険と比較してそれほど高くありません。
また、逝去から保険金支払いまでのスピードが速いため、急な訃報に際して活用しやすい点もメリットです。遺族が建て替え、あとから保険金で負担するといった手順を踏まなくても済みます。
メリット③使用用途が自由
最大のメリットが、使用用途の汎用性です。葬儀保険の保険金は、葬儀費用一式以外にも使用できます。例えば、入院費の精算・相続費用・葬儀後の生前整理費用などです。僧侶へお渡しするお布施や返礼品の購入費にも使用できます。
葬儀保険のデメリット3つ
葬儀保険には以下3つのデメリットがあります。
- ・デメリット①基本は掛け捨て型
- ・デメリット②保険金の支払いまで一定期間必要
- ・デメリット③保険会社が倒産しても公的支援が受けられない
加入を検討している方は、必ず確認しておきましょう。
デメリット①基本は掛け捨て型
葬儀保険は、基本的に掛け捨て型で貯蓄性がありません。途中で解約しても解約返戻金などはなく、それ故保険料が安くなっています。
また、少額短期保険ですので更新までの期間が短く、その度に保険料が高くなります。加入期間が長い場合、保険料の総支払額が保険金を上回ってしまう可能性も少なくありません。
加入前には、総支払額と保険金を確認しておきましょう。
デメリット②保険金の支払いまで一定期間必要
葬儀保険に限らず、保険商品には「免責期間」が設けられています。免責期間とは、保障の対象となる事象が発生しても保険金が支払われない期間です。「責任開始日」という表記の場合もあります。
免責期間に保障対象者が亡くなってしまった場合、保険金は受け取れません。
免責期間は保険商品によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
デメリット③保険会社が倒産しても公的支援が受けられない
葬儀保険のような少額短期保険の場合、保険会社が倒産しても公的な支援が受けられません。少額短期保険には「保険契約者保護機構」の制度がないためです。
ただし、供託が義務付けられているため、倒産しても供託金からは補填されます。まったく保障が無いとはいいませんが、一般的な保険と比較してリスクが伴います。
葬儀保険の選び方や注意点
葬儀保険は、ただ入れば良いというものではありません。以下のポイントに留意して適切な商品を選ぶ必要があります。
- ・葬儀費用の内訳を把握しておく
- ・葬儀形式を明確にしておく
- ・葬儀に当てられる貯蓄額を決めておく
- ・保険金の受け取り日時を確認しておく
それぞれ解説します。
葬儀費用の内訳を把握しておく
「葬儀費用にはいくら必要なのか」を事前に把握しておくのが大切です。近年は葬儀形態も多様化しており、どれを選択するかによって必要な費用が異なります。各葬儀形体における葬儀費用の平均は以下をご参照ください。
葬儀形態別・葬儀費用の平均(お布施代は除く) | |
葬儀形態 | 葬儀費用の平均(北海道) |
2日葬(家族葬の形式の場合) | 40万〜60万円 |
1日葬 | 20万〜40万円 |
直葬(火葬式) | 10万〜20万円 |
また、葬儀費用と一口に言っても内訳は細分化されており、参列者の人数によって費用は変動します。葬儀費用の内訳は以下の通りです。
- ・葬儀費用一式
- ・お布施代
- ・飲食代金
- ・返礼品代
割合の多くを占めるのが「葬儀費用一式」で、「式場使用料・祭壇・棺・枕飾り・遺影写真・供物」などが該当します。
その他「お墓の購入費・仏壇の購入費・遺品整理費用」なども必要です。
これら全ての費用を葬儀保険で賄うのは現実的であありません。「どこまで貯蓄で支払い、どこから保険金を使うか」を明確にしておく必要があります。
そのためにも、葬儀の具体的な費用を把握しておく必要があるのです。
葬儀形式を明確にしておく
前述の通り、近年は葬儀形態が多様化しています。一昔前は「一般葬」が主流でしたが、最近は親しい身内のみでこぢんまりと執り行う「家族葬」が人気を集めています。また、ミニマムな葬儀である火葬式や直葬を選ぶ割合も、以前よりは多い傾向です。
どの葬儀形態を選ぶかによって、葬儀費用は大きく異なります。それぞれの平均費用は前章で解説している通りです。
事前に希望の葬儀形態を明確にせず葬儀保険に加入した場合、いざという時に「保険金が少なすぎる」という事態になりかねません。反対に、保険金が高いプランに加入して負担が増してしまうと本末転倒です。
葬儀保険に加入する際は、希望の葬儀形式を明確にしてからにしましょう。その方が、過不足ない適切なプランを選択できます。
葬儀に当てられる貯蓄額を決めておく
葬儀保険で葬儀に必要な費用を全て賄うのは現実的ではありません。貯蓄額も考慮し、足りない分を葬儀保険で補填するのが理想です。
そのため、葬儀に当てられる貯蓄額は事前に決めておくと良いでしょう。「必要な葬儀費用-葬儀用の貯蓄=葬儀保険で補填する分」として葬儀保険を探すと、無駄のない商品が契約できます。
保険金の受け取り日時を確認しておく
逝去後、故人の口座は凍結してしまうため、葬儀費用が引き落とせなくなります。そのため、保険金の受け取り日時は確認しておきましょう。
多くの保険会社は「最短翌日〜5営業日以内」としています。目安としては「翌営業日払い」もしくは葬儀社に直接支払われる「保険金直接払い対応」であれば安心です。
また、契約時に受取人を本人以外にしておくと口座凍結の心配をしなくて済みます。
保険金受け取りまでの流れ
葬儀保険の保険金受け取りまでの流れは以下の通りです。
- 1.保険会社に連絡
- 2.保険会社から送付された書類に必要事項を記入
- 3.必要書類をそろえて保険会社へ送付
- 4.保険会社が判断し保険金が支払われる
必要書類には、死亡届や故人の戸籍謄本などが含まれます。保険金支払いまでの目安は、各保険会社によって異なります。
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葬儀保険は貯蓄額と希望する葬儀形式を明確にしてから検討するのがおすすめ
葬儀保険とは、葬儀に必要な費用を補填する目的で加入する少額短期保険の一種です。掛け金が少なく持病があっても加入しやすいといったメリットがある一方、貯蓄性がなく、保険金に対する公的支援が受けられないといったデメリットもあります。
葬儀保険は一長一短ですので、保険の内容をよく吟味してから加入するようにしましょう。
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