葬儀の知識
孤独死は、家族や友人がそばにいない中でひとりで亡くなることを指します。近年、日本の高齢化や単身世帯の増加に伴い、特に都市部で孤独死が増えていると言われています。こうした事態に備えて一定の制度や支援が整備されていますが、具体的な葬儀手順や費用の詳細は、あまり知られていません。
本記事では、札幌市における身寄りのない方の葬儀手順や対策について解説します。葬儀後の遺品整理や孤独死に備えた生前準備についても紹介します。孤独死という現実に対して、いざというときに困らないように必要な知識を身につけておきましょう。
身寄りのない人が亡くなった場合、葬儀はどうなる?
日本の法律では人が亡くなった際には、必ず火葬・埋葬を行わなくてはなりません。亡くなった方に家族や親戚などの身寄りがなく、葬儀をあげてくれる人が身近にいない場合は、役所が故人の戸籍をたどって親族を探し、遺体の引き取りと火葬・埋葬を依頼するのが一般的です。
故人の近隣住人や入居施設が葬儀を引き受けてくれる場合もあるでしょう。故人に親族がいない場合や疎遠で引き取りを拒否された場合には、死亡地の自治体が遺体を引き取り、火葬・埋葬を行います。
自治体が火葬や埋葬を行う場合、法律に基づいた最低限の簡素な火葬・供養となり、宗教儀礼である葬儀は行われません。
身寄りのない方が亡くなった場合の葬儀の流れ
亡くなった方に身寄りがない場合、遺体の発見から火葬までには行政の手続きや特定の流れがあり、通常の葬儀とは異なる点が多くあります。ここでは、遺体発見から火葬までの流れについて、詳しく解説します。
遺体発見後は警察に連絡を
身寄りのない方が亡くなり、発見が遅れることも多いため、まず警察への連絡が必要です。警察が到着次第、身元確認や死因の特定を行い、必要に応じて現場の保存や調査を進めます。
また、発見が遅れた場合には遺体が腐敗していることもあり、特殊清掃が必要になるケースもあります。この場合、警察の調査終了後、自治体が専門業者を手配することもあります。
警察による身元確認と調査が終わり、近親者がいないことが確認されると、札幌市などの自治体が葬儀や火葬の手続きを行います。
死亡確認~火葬までの流れ
亡くなった方の身寄りがない場合、遺体の発見から火葬までの手続きは、自治体が主導して行います。札幌市の場合、以下のような流れで進行します。
- 1.死亡確認と届出
- 2.最終安置
- 3.火葬の実施
身寄りがない場合、簡素な形式で葬儀や火葬が行われることが多く、自治体が火葬場の予約や手続きのすべてを代行します。通夜や告別式は行われず、火葬のみの形が一般的です。上記の流れで身寄りのない方の火葬が速やかに行われ、故人に対する配慮がなされた形で供養されます。
葬儀後、身寄りのない人の納骨はどうなるのか?
身寄りのない方の葬儀後、遺骨の取り扱いは自治体が主導し、納骨が行われます。札幌市では、一般的に無縁墓や合同墓地など、自治体が管理する場所に安置されることもありますが、基本的には以下の流れで進められます。
- 1.一時保管
- 2.葬儀と火葬の手配
- 3.供養の継続
火葬後、遺骨は一時的に自治体の保管施設に置かれます。この期間中に、後から親族が名乗り出る可能性があるためです。一定期間が経過しても親族が見つからない場合、札幌市が管理する無縁墓や合同墓地に遺骨が埋葬されます。他の身寄りのない方の遺骨とともに、永代供養が行われることになります。
身寄りのない人の葬儀費用は誰が負担するのか?
親族が遺体を引き取って葬儀を行う場合、故人に財産が残っている場合、その財産を葬儀費用に充当することができます。
しかし、葬儀を行う側にも故人にも財産がほとんどなかった場合は困ってしまうでしょう。なかには「今までほぼ付き合いのなかった親戚の葬儀を引き受けざるを得なくなり、困ってしまった」という事例もあるようです。
葬儀や埋葬の費用がない場合には以下のような給付制度もあるため、利用を検討してみましょう。
- ・葬祭給付金
- ・埋葬給付金
- ・葬祭扶助制度
それぞれ詳しく解説します。
葬祭給付金
故人が健康保険など公的医療保険に加入している場合、葬儀費用として給付金を受け取ることができます。
金額は加入していた公的医療保険の種類や、申請者と故人との関係によって異なります。
埋葬給付金
故人が健康保険など公的医療保険に加入している場合、埋葬を行った方が埋葬費用の給付を受けることができます。上限金額はありますが、条件に該当するのであれば申請しましょう。
葬祭扶助制度
自治体が火葬・埋葬を行うための最低限の金額を支給する制度です。
下記の場合が対象です。
- ・生活保護を受けていた人が亡くなり、遺族・親族以外の方が葬儀をする場合
- ・生活保護を受けていた人が亡くなり、遺族・親族が葬儀をするが、葬儀を行う自身も生活保護を受けているなど葬儀費用が捻出できない場合
支給される金額は自治体によって異なりますが、最低限の金額の支給となるので、火葬と埋葬のみの直葬・火葬式という形になるのが一般的です。
葬儀に関わる給付金や葬祭扶助制度についてはこちらでも詳しくご紹介しています。
【関連記事】葬儀を行うお金がない場合の対処法。葬儀費用を抑える方法もご紹介
自治体が火葬・埋葬をする場合は、故人に財産がある場合はその財産を葬儀費用に充当し、全く財産がない場合は自治体が火葬・埋葬費用を負担します。
葬儀後の遺品の扱いはどうなる?
亡くなった方が身寄りのない方であった場合、相続財産管理人を選任し、遺産の管理と精算をしなければなりません。利害関係者や検察官によって申立てが可能ですが、決定するまでには時間がかかります。もし相続財産管理人が選任できない場合は、行政や自治体が話を進めることになるのです。
親族や相続人の確認され、親族が見つかれば遺品は親族へ引き継がれます。親族がいない場合は自治体が遺品整理業者を手配し、日用品や衣類は適切に処分されます。貴重品については法的に公共機関が管理し、一定期間の保管後に処分されることも珍しくありません。
身寄りのない方の遺品も故人への配慮をもって整理・処理されます。しかし、処分されてしまうと遺族が見つかっても相続できないため、注意が必要です。
孤独死に備えて生前にできる準備とは?
身寄りのない方が、万が一孤独死をしてしまっても思い通りの葬儀や相続をしてもらうためにはどうしたら良いのでしょうか。具体的には、以下のことをしておくことをおすすめします。
- ・エンディングノートを用意する
- ・遺書を残しておく
- ・第三者に相談しておく
それぞれの詳細を見てみましょう。
エンディングノートを用意する
身寄りのない方が孤独死に備えるためのひとつの方法として、エンディングノートの作成があります。エンディングノートは、自分が亡くなった後にどのような対応を望むか、財産や保険、葬儀の希望、親しい友人の連絡先などを記録しておくノートです。具体的には、以下の内容を記しておくとスムーズです。
- ・基本的な個人情報:名前、住所、連絡先
- ・財産や保険の情報:銀行口座、保険の詳細など
- ・葬儀や納骨の希望:葬儀の規模、納骨方法、宗教的な希望など
- ・親しい人や連絡先:自分が亡くなった際に連絡してほしい人のリスト
エンディングノートを用意しておくと、万一の際に遺族や行政が必要な手続きを進めやすくなるため、安心感につながります。
遺書を残しておく
孤独死に備えて、エンディングノートに加え、正式な遺書を残しておくことも重要です。遺書は財産や遺産の分配に関する意思を法的に明確にするための書類であり、内容が法的効力を持つためには一定の形式を満たす必要があります。具体的には以下の内容を含めると効果的です。
- ・財産の分配:現金や不動産、貴重品などの遺産の配分について具体的に記載
- ・信頼できる連絡先:身近で信頼できる人や行政に連絡を任せる場合は、その人の情報を記載
- ・その他の希望事項:ペットの世話や未完の事務処理など、亡くなった後にしてほしいこと
遺書を残しておくことで、遺産の管理や手続きがスムーズに行われ、故人の意向が最大限に尊重されます。ただし、遺言書作成には手間も時間もかかるため、費用をかけてでも専門家に相談することをおすすめします。
第三者に相談しておく
孤独死に備えて、信頼できる第三者に生前の希望や状況について相談しておくことも大切です。家族がいない場合や、身寄りが遠方にいる場合でも、第三者に相談しておくことで、万一のときに手続きを進めやすくなります。以下のような方法で準備ができます。
- ・友人や知人に依頼する
- ・行政や地域の相談窓口を利用する
- ・専門家のサポート
札幌市では地域包括支援センターなどの窓口で、孤独死に関する相談や情報提供が行われています。死後について不安がある方や、遠方に親族がいる方は相談しておくと良いでしょう。
このように、信頼できる第三者に相談しておくことで、最期の時が来た際も希望に沿った対応がされやすくなります。
まとめ
孤独死は、日本の社会問題のひとつであり、誰もが直面する可能性があるものです。親族が孤独死した場合に備えて、本記事を参考に死亡後から葬儀までの流れを確認しておきましょう。
また、ひとり暮らしをしている側も、万が一に備えてエンディングノートの作成や遺書の準備などの生前の準備を進めてください。これらを整えておくことで、遺族や関係者の負担が軽減され、最期の希望を反映できます。事前に準備を整え、本人も遺族も安心して最期を迎えられるようにしましょう。